板金部門 溶接グループ リーダー Tさん
二十歳で溶接の道に進み、23年が経ちました。他社での勤務を経て当社に移りましたが、この現場では溶接歴は長い方だと思います。平らな金属が曲げられて箱形などの「形」になり、それを自分が溶接して仕上げるという成形の魅力はずっと感じていて、当社が納めた製品をお客様が使っているところを目にすると「自分の手で作ったものが人の役に立っている」と実感し、やりがいを感じます。
素材ごとの見極めも重要で、例えばアルミニウムは熱伝導率が高いので熱を加えると溶けやすく、溶接のスピード調整が大切です。この塩梅は、どうしても経験に左右されるんです。1年目の職人と10年目の職人が同じ素材を見ても判断は違う。これが技術の差なんですよね。
先程もお話したとおり、溶接は技術職です。昔から「10年続けてようやく一人前」と言われてきました。若い頃は「目で見て技を盗め」と厳しく指導されたものですが、教わる側はつらい思いをしたものです(笑)。
教える側になってからはそんな苦い経験を生かし、後輩が最短期間で習得できるよう指導しています。時代とともに指導法は変わっても、一所懸命にものづくりをするという基本は変わりません。ていねいに説明した上で作業を見ながら「彼/彼女にはきちんと伝わっているか?」を1人ずつ確認するようにしています。伝わっていなくても叱らず、もう一度伝える。大切なのは、肝になる部分を理解してもらうことです。技術はあとからついてきますから。
また、同時に伝えたいのは「シンプルな技術であっても一度で自分のものにすることはできない」と言うこと。同じ作業を何度も反復し、体に覚え込ませることが必要なんです。
当社では、以前は一つの仕事を1人の担当者が担当する方法を取っていたんですが、そうすると人によって技術差が生じ、効率も落ちてしまう。万一その人が退社してしまったら、技術も途絶えてしまいます。
そこで、全員に分け隔てなく仕事を割り振ることで、全体のレベルの底上げに取り組んでいます。全員のクオリティが近づけば仕事が集中した時も割り振れるし、短納期の仕事も分担して残業を減らせる。会社の業績にも個人のスキルアップにも、いい変化が生まれつつあります。